
監査報告書(22号)は、提出されるときには1枚の書類です。しかし出来上がるまでの過程は1つの作業ではなく、性質の違う複数の工程が連なっています。「報告書の作成に時間がかかる」という感覚は、この連なり全体を1つの塊として見ているために生まれます。この記事では、監査報告書ができるまでを7つの工程に分け、どこが機械に移せる工程で、どこが人に残る工程なのかを整理します。
現場の症状:時間がかかっているのは「書く時間」ではない
監査報告書について、監理団体の職員の方からよく伺うのは次のような状況です。
- 巡回から戻ってきた日は書けず、数日後にまとめて着手することになる
- 現場のメモ、写真、聞き取った内容が別々の場所にあり、探すところから始まる
- 前回の報告書を開いて、書きぶりや指摘事項の続きを確認する
- 書き上がった後で、記載の抜けや前回との食い違いに気づいて戻る
注目したいのは、この中に「文章を書く時間」がほとんど含まれていないことです。実際に時間を消費しているのは、材料を探す時間、転記する時間、突き合わせる時間、抜けを確認する時間です。文章を書くこと自体は、全体から見れば短い工程です。
構造の説明:1つの書類に、性質の違う作業が同居している
監査報告書の作成が重く感じられる理由は、能力や慣れの問題ではありません。1枚の書類の中に、判断が要る作業と、判断が要らない作業が混ざっているためです。
判断が要る作業とは、たとえば「今回どの企業を対象にするか」「この状況を指摘事項として書くべきか」といった、責任を伴う判定です。これは監理団体が担うべき中核であり、外に出せるものではありません。
一方、判断が要らない作業とは、聞き取った内容を様式の欄に振り分ける、前回の記載と今回の記載を並べて差分を見る、必須欄が埋まっているかを確かめる、といった作業です。これらは正確さは要りますが、判定は含みません。
この2種類が1枚の書類の中で混ざっているため、判断の速度が転記の速度に引きずられます。 逆に言えば、この2つを工程として分けて見ることができれば、後者だけを機械側に移すことができます。育成就労制度への移行が視野に入り、監理支援機関としての体制が問われるなかで、この分離はいずれ避けて通れない整理です。
工程の分解:監査報告書ができるまでの7工程
さくら協同組合(架空)が、受入企業である株式会社サンプル製作所(架空)を巡回し、監査報告書を作成する場面を想定して、工程を分けてみます。
① 対象選定
今回どの企業を、どのタイミングで訪問するか。前回の巡回からの経過、実習生の在留期限、届出の状況、過去の指摘の残り方などを見て決めます。
② 論点整理
その企業について、今回何を見るべきかを事前に決めます。前回の指摘事項、業種特有の確認点、実習生から寄せられていた相談の内容などが材料になります。ここが曖昧なまま現場に行くと、現場での取得が場当たり的になります。
③ 現場記録
実際に訪問し、現場を見て、受入企業の担当者と実習生から話を聞き、記録します。写真、メモ、音声など、形式は様々です。この工程だけは現地でしか行えません。
④ 転記
現場で得た記録を、様式の欄に振り分けます。1つの発言が複数の欄にまたがることもあり、どの欄に何を書くかの割り振りが必要になります。
⑤ 作成
振り分けた内容を、報告書として読める文章に整えます。団体としての書きぶり、過去の報告書との言い回しの一貫性が求められます。
⑥ 不足確認
必須欄の空白、前回報告書との整合、記載内容どうしの矛盾を確認します。ここで見落とすと、後から差し戻しになります。
⑦ 確定・提出
内容に責任を持つ立場の人が確認し、団体として確定させ、提出します。
境界線:どこが機械側で、どこが人側か
7工程を、性質で分けると次のようになります。
機械側に移せる工程は、①対象選定の材料集め、②論点整理の下案づくり、④転記、⑤作成の下書き、⑥不足確認です。いずれも「決められた材料から、決められた形に組み立てる」作業であり、判定を含みません。訪問指導記録や過去の監査報告書、届出の履歴を参照して、下書きの形まで持っていくことができます。
人側に残る工程は、③現場記録と⑦確定・提出です。この2つは、機械に移すべきではありません。
なぜなら、③現場記録は、株式会社サンプル製作所の担当者の表情や言いよどみ、実習生のAさんが寮の話題になったときの間の取り方といった、記録に残らない情報を含む工程だからです。実習生・受入企業との面談における判断は、その場にいる人にしかできません。
⑦確定・提出も同じです。この報告書の内容に団体として責任を負うという判断は、機械が代わりに行えるものではありません。下書きがどれだけ整っていても、確定させるのは人です。
つまり、7工程のうち人が触るのは2工程です。残りの5工程は、材料さえ揃っていれば機械側に移せます。
次の一歩
ここまでは、監査報告書がどういう工程で出来上がっているか、そのうちどこが移せるかという整理です。「では実際に、うちの様式でどこまで下書きが出来るのか」という部分については、記事では判断がつかないと思います。
Ristaが実際に起草した監査報告書(22号)の下書きを、入力不要で公開しています。確定前の状態そのままですので、どこまでが機械の仕事で、どこから人が触ることになるのかを、実物で確かめていただけます。詳しくは起草サンプルをご覧ください。


