
実習生との面談は、監理団体の業務のなかでも特に人の力が要る場面です。相手の様子を見ながら聞き方を変え、言いにくいことを言える空気をつくる。ここは機械が代われる部分ではありません。一方で、その面談で得たものが、次の工程で使える形になっているかは別の問題です。この記事では、面談の記録を3つの工程に分けて整理します。
現場の症状:面談は丁寧なのに、記録が薄い
面談の記録について、監理団体の方から次のような話を伺います。
- 面談そのものには時間をかけているが、記録は「特に問題なし」の一行で終わることがある
- 面談中はメモを取ると相手が構えるため、終わってから思い出して書いている
- 担当者によって、聞く項目も記録の粒度も違う
- 半年前の面談で何を聞いたかを確認したいが、記録から読み取れない
- 監査報告書(22号)を書くときに、面談の内容を材料として使えない
最後の項目が、実務上いちばん影響が大きい部分です。面談は本来、監査や訪問指導の重要な情報源です。しかし記録が薄いと、面談で確かに聞いたはずのことが、後の工程で存在しなかったことになります。
構造の説明:面談の「質」と記録の「形」は別の問題
ここで整理しておきたいのは、記録が薄いことと面談の質が低いことは別だということです。むしろ、面談に集中している担当者ほど記録が後回しになりやすい構造があります。
理由は2つあります。
1つは、面談中に記録を取ることが、面談そのものを妨げるからです。実習生のAさんが職場のことを話しているときに、担当者が手元のメモに視線を落とせば、話は止まります。だから多くの担当者は、あえてメモを取らず、後で思い出して書きます。そして時間が経つほど、細部が落ちます。
もう1つは、記録の形が組織として決まっていないことです。何を聞くかが担当者ごとに違えば、記録も担当者ごとに違う形になります。その結果、記録どうしを並べて比較することができず、時系列で状況を追うこともできません。
育成就労制度への移行にともない、監理支援機関としての実習生保護の実効性がより見られる形になることが想定されます。個々の面談が丁寧であることに加えて、面談の記録が組織として蓄積され、後の判断に使える状態にあるかが問われる方向です。
工程の分解:面談記録の3工程
さくら協同組合(架空)が、株式会社サンプル製作所(架空)で働く実習生のAさんと面談する場面で、工程を分けてみます。
① 聴取項目の固定
面談に入る前に、今回聞く項目を決めます。全員に共通して聞く項目と、この実習生に固有の項目の両方があります。
固有の項目の材料になるのは、前回の面談で挙がった内容、その後の訪問指導記録、受入企業の状況の変化、在留期限までの残り、届出の履歴などです。「前回、寮の相談があったから今回はそこを確認する」といった接続を、担当者の記憶ではなく事前の項目として持っておきます。
この工程が固定されていると、担当者が変わっても聞く内容の水準が保たれます。
② 音声からの整理
面談そのものは、メモを取らずに行います。そのうえで、記録の材料をどう確保するかという工程です。
音声として取得しておき、後から整理する形であれば、担当者は面談中に相手だけを見ていられます。 取得した音声から、①で固定した項目ごとに内容を振り分け、記録の形に整えます。ここは判定を含まない整理の作業です。
なお、音声の取得については実習生本人への説明と同意が前提になります。この点は運用として先に決めておく必要があります。
③ 相談記録への接続
整理した内容を、その実習生の相談記録につなぎます。単発の面談記録として置くのではなく、過去の面談・相談・訪問指導記録と同じ線の上に並べます。
これができていると、次の監査報告書(22号)を書くときに、面談で挙がった内容をそのまま材料として使えます。逆にここが切れていると、面談記録は「読み返されない書類」になります。
境界線:どこが機械側で、どこが人側か
機械側に移せる工程は、①聴取項目の下案づくり、②音声からの整理、③相談記録への接続です。
①は、過去の記録や在留期限、届出の状況といった材料から「今回確認すべき項目」を組み立てる作業です。人はその下案を見て、追加や削除を判断します。
②と③は、判定を含まない整理と接続の作業です。取得した音声を項目ごとに振り分け、既存の相談記録に紐づける。人が記憶をたどって書き起こすより、確実で、担当者ごとのばらつきも出ません。
人側に残るのは、面談そのものです。 これは工程として移せるかどうかという以前に、移してはならない部分です。
実習生のAさんが「大丈夫です」と言ったとき、それが本当に大丈夫なのか、言いにくいことを飲み込んだのかを見分ける。話が途切れたときに待つのか、話題を変えるのかを決める。実習生・受入企業との面談における判断は、その場にいる人にしかできません。 機械の役割は、担当者がその判断に集中できるように、事前の準備と事後の整理を引き受けることです。
次の一歩
面談の記録をどう扱うかは、様式の問題ではなく運用の問題です。音声を取得するかどうか、誰がどこまで見られるようにするか、実習生への説明をどう行うか。ここは団体ごとに考え方が分かれる部分でもあります。
Ristaでは、こうした運用の考え方や、機械に移せる範囲と人が持つべき範囲の線引きについて、ウェビナーで説明しています。詳しくはウェビナーのご案内をご覧ください。


